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研修報告updated; 2011.09.16

tsuchihashi

研修報告

土橋 賢司Kenji TSUCHIHASHI, M.D.

平成20年九州大学卒


経歴


平成20年3月 九州大学医学部医学科 卒業
平成20年4月 聖路加国際病院 初期臨床研修 開始
平成22年3月 同上 修了
平成22年4月 九州大学大学院医学研究院病態修復内科学(がん専門医養成コース)進学
九州大学病院 血液・腫瘍内科 医員
平成23年4月 慶應義塾大学先端医科学研究所遺伝子制御研究部門共同研究員 

腫瘍内科を志したきっかけ

小学生の頃より、漠然と不治の病であるがんへの畏怖と、だからこそ何とかしたいという感情を持っていました。医学生、研修医時代に、末期がんで苦しむ多くの方々と出会い、がんを少しでも治癒できる病にしたい、がん患者さんと一緒に歩みたいと思い腫瘍内科医になることを決意しました。また、あるがん種というより、がん全体と関わりたいと考え、腫瘍内科の道を選びました。

腫瘍内科医としての道を歩みはじめて

2年間の卒後初期臨床研究を終了し、3年目は大学院のがんプロフェッショナルコースに進むとともに、九州大学病院での病棟業務を開始しました。先輩方と同様に、消化器がん(食道癌、胃癌、大腸癌、胆嚢癌など)、肉腫(横紋筋肉腫、脂肪肉腫、滑膜肉腫など)、原発不明癌などの患者さんを中心に受け持たせて頂くことになりました。受け持つ患者さんの数は、8〜15人くらいですが、その時の病棟医の先生に左右されます。

各がん種の標準治療を学ぶことより始まりますが、患者さん、ご家族は、病気に対してどのような考えをお持ちなのか?どのような治療を望まれているのか?どのような治療があるかご存じなのか?を、感じ把握する必要があります。そして、補足出来る分の情報を提供することが大切と感じました。

また、治療の選択肢を提供する側として、抗がん剤治療を施行すること自体にメリットはあるのか?標準治療を行うことが適切なのか?標準治療がない場合はどのようにするのか?などを判断していく必要があります。標準治療を知ることに留まらず、標準治療が成立するまでに至る歴史を知ることは、標準治療以外の治療を行う際にも非常に大きな助けになることを感じました。

また、治療のタイミングは大変重要で、遅れると全身状態の悪化を招き、治療自体が困難になること、逆に評価しきれずに治療を開始すると思わぬ合併症を生む可能性のあることを学びました。

さらに強調したいのは、抗がん剤の知識だけでなく、緩和医療、リエゾンの大切さ、そして、何よりも、患者さん自身を知ることが一番重要であると感じました。病気に対する治療法はどのようなものがあるか、時に九州大学腫瘍内科としてお勧めする治療は何であるかなどを伝えますが、最終的に尊重され、決定されるのは、患者さん自身、ご家族です。そして、何故患者さんやご家族が、ある治療を選択されたかと知ることは、患者さんの気持ちに沿った医療を行う上で非常に重要であると実感しました。

腫瘍内科の道に進んだ場合

腫瘍内科というと、抗がん剤を専門にする科という印象と思いますが、実はその道も、いくつかのバリエーションによって成り立ちますので紹介させて頂きます。これらの道は、並立もしますし、変遷もできます。

A. 臨床試験
言い換えますと、標準治療を作っていく道です。標準治療はあくまでその時点の標準であり、未来の標準は、現在・今後の臨床試験により築かれていきます。そのような臨床試験を立案、実行していくことで、新しい標準を切り開いていきます。世界の標準治療に関わるだけでなく、人種によりがん種の性質や、薬剤代謝などは異なりますので、より日本人に合った標準治療は何なのか?日本人に合う薬は何なのか?なども重要です。さらに、臨床試験は、第I相〜III相、つまり薬剤の安全性、代謝〜実際の効果までと、どの面を評価していくかで分かれており、それらに関わることは、抗がん剤を熟知することにつながり、日常臨床にも多いに役立ちます。

B. 基礎研究
がんの病態を明らかにすることで、最終的には治療薬開発につなげることを目標とします。つまり、がんの未解明の部分を明らかし、新規治療標的を見つけることで、多くの患者さんに還元することを目指します。抗がん剤が世に出るのも、基礎研究という土台があってこそであり、その部分を担います。臨床の先生方も大学院、それ以降も含め、多くの方が経験を積まれる道です。腫瘍内科は、がん全体を対象とする特性上、がんに対して鳥瞰的視点をもつことも重要となりますが、そのためには、蟻の視点であるがんの基礎を知る意義は重要です。

C. がんの緩和医療、精神医療
抗がん剤は、がん自体を対象としていますが、がんによる身体的、精神的苦痛に対応できることは、時に患者さんにとっては抗がん剤以上に重要な位置を占めます。抗がん剤は奏効しているが、患者さんが苦痛を感じているままでは、森をみずの医療になってしまいます。苦痛を和らげることは、患者さんの治療意識にも大きな影響を及ぼし、それが最終的には治療効果につながります。がんの緩和医療に熟知することは非常に大切です。また、時に医者は哲学的な職業であると表されるように、特にがん患者さんの精神医学について学ぶことは、患者さんの気持ちに近づく道でもあります。緩和ケア専門医や精神科の先生方に学ばせて頂きつつ、腫瘍内科医としてそれらの側面への見識を深めることは重要です。

医学生、研修医の皆様へ

腫瘍内科は、非常に患者さんに学ばせて頂くことの多い科です。 標準治療、抗がん剤、各臓器機能と抗がん剤の関わり、がんに多い感染症、がん特有の緊急疾患(Oncologic emergency)、臨床試験、また、がんの罹患年齢上、高齢医療について、さらに予防医療、健康診断の知識など、非常に多岐に渡る知識があればあるほど、手助けになります。

その一方で、患者さん、ご家族お一人お一人の「がん」に対する考え方、向き合い方は様々で、それには人生観、価値観など、患者さんの「生き方」が反映されます。 真摯に患者さんに向き合い、一緒に歩むことは、何物にも代え難い経験です。 それらを通じ、時に無力さを感じつつ、医者として、そして人として、成長させて頂いていることを実感し、患者さんとの出会いに感謝できることは、一番のやりがいです。

腫瘍内科医として活躍できる場は、日常臨床、臨床試験、基礎研究、緩和医療などをはじめ、非常に多岐に渡っています。是非、一緒にがん医療を一歩でも前に進めていきませんか?

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