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研修報告updated; 2008.11.07

komoda

研修報告

薦田 正人Masato KOMODA, M.D.

平成17年大阪大学卒


経歴


平成6年3月:修猷館高校卒業
平成10年3月:東京大学薬学部卒業
平成12年3月:同大学院修士課程修了
平成17年3月:大阪大学医学部卒業
平成17年4月:聖マリア病院研修医
平成19年4月:第一内科入局、九州大学病院医員
平成20年4月:九州大学大学院医学系学府博士課程(がんプロフェッショナルコース)入学

医師を目指した理由

私は21歳で耳下腺がん(粘表皮がん・低悪性度)を患い、手術(拡大耳下腺全摘術+頚部リンパ節郭清術)を受けました。 顔面神経の合併切除、前腕筋皮弁による再建などを伴う比較的大きな手術で、後遺症として顔面神経麻痺があり、顔には傷跡が残っています。幸いなことに、術後10年経過で再発はないようですが、鏡を見ると「がん」の手術を思い出します。

自らが経験した「がん」という病気に興味を抱き、当時薬学部の学生だった私は抗がん剤の研究者を目指そうと考えました。薬学部の大学院へ進学後、主に培養細胞を使って薬剤の作用メカニズムを解析する研究を開始しました。一定の成果が得られましたが、私の研究成果がどのように臨床の場で役立っていくのか、医師でない私にはあまりイメージできませんでした。そんな中で、臨床医として多くの患者さんを診療した経験を持ちながら、研究にも従事して、二足のわらじで仕事をする先生方に出会いました。彼らの、臨床経験に裏付けられた視点の鋭さと、仕事に対するモチベーションの高さに感銘を受け、自分も医師となり、がんの診療・研究に従事したいと思うようになりました。

医学部の3年次に編入することができる「医学部学士入学試験」の受験を決意、狭き門のため多くの不合格を経験して、挫折を味わいながら全国の大学を受験してまわりました。幸運に恵まれて医学部に編入することができ、休日・夜間に薬剤師のバイトをしながら4年間で医学部を卒業、29歳の時に医師になることができました。

腫瘍内科を目指した理由

私が研修医になった時は、現在の臨床研修制度(2年間のローテート研修)が始まっていたため、まだ専門を決めていませんでした。薬学部出身でもあったため薬の開発に興味があり、抗がん剤治療を専門にしたいということは以前から考えていましたが、私の卒業した大学では「腫瘍内科」はなかったので、まずその存在を知りませんでした。日本では多くの病院で、固形腫瘍の抗がん剤治療は外科医の仕事である場合が多く、最初は外科系の診療科を選ぶことも検討していました。 しかし、欧米では、臓器横断的に抗がん剤治療を専門として診療を行う「腫瘍内科医」(=medical oncologist)が、がん診療の中で重要な役割を担っていることを知り、非常に興味を持ちました。今後ますます増えてくるがんの患者さんたちがそれぞれの地域で最善の治療を受けるためには、日本でも欧米のような質の高い「腫瘍内科専門医」の数が増えることが重要ではないかと感じました。

当時(研修医時代)、がん患者さんたちからの社会的要請に呼応する形で立法化された「がん対策基本法」が施行されたばかりで、日本でも腫瘍内科医の育成に国をあげて取り組む方針となったことを知りました。腫瘍内科の専門医を認定する、臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医の制度ができて、その試験が始まったばかりであることを知り、私も「がん薬物療法専門医」を目指したいと考えました。日本では歴史の浅い分野ですので、不安もありましたが、国策となっていることもありますし、社会的なニーズが減ることはなく、将来性の高い重要な仕事になると思いました。

私は九州福岡の出身で、同じく九州出身の妻と結婚したこともあり、家族のためにも生活の場を九州に置きたいという気持ちと、大好きな地元九州のがん診療の向上に貢献したいとの気持から、九州で腫瘍内科の研修ができる研修先を探しました。九州大学第一内科は、全国的に希少な「がん薬物療法専門医」を多く輩出している実績があり、がんの診療実績も豊富であることに加え、九大の学生からは「研究の一内」として知られていて、臨床研究・基礎研究にも殆どの医師が従事し研究指導体制も整っていることを知り、私の希望を殆ど全て充足してくれる教室だと思いました。 私は九大出身ではなく、九大病院で研修したこともなかったため、実際の腫瘍内科の仕事を経験していない点で不安がありましたが、九大病院を見学し、当時の病棟医員であった白川先生がいきいきと仕事をしている様子を見てとてもうらやましく思い、第一内科への入局を決めました。

現在、腫瘍内科専門医である「がん薬物療法専門医」の人数は欧米のmedical oncologistの数に比べ非常に少ないです。私は自ら腫瘍内科医となって研修を積み、将来は多くの腫瘍内科医を育成する立場に立って、地域でのがん診療の質の向上に貢献したいと考えています。

当科での経験症例

平成19年4月〜平成20年3月の一年間で私が経験した症例です。
■消化管
食道がん、胃がん、大腸がん
■肝胆膵
肝細胞がん、胆嚢がん、膵がん、肝類上皮血管内皮腫
■造血器
悪性リンパ腫(濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫)、多発性骨髄腫
■頭頚部
舌がん、耳下腺がん、上顎骨肉腫、下顎軟部肉腫
■胸部
肺がん、乳がん、悪性胸膜中皮腫、悪性心膜中皮腫、浸潤性胸腺腫
■腹部〜骨盤部
卵巣がん、子宮頚がん、腎盂がん、副腎がん、腹膜がん、腹膜偽粘液腫
■その他
原発不明がん

当科での研修内容

進行期のがん患者様が大半を占めます。消化管のがんを多く経験しますが、他科との連携が進みつつあり、他の領域のがんも多く経験できました。また、第一内科の他のグループの疾患(血液疾患、循環器疾患、膠原病、肝疾患、感染症など)も受け持ち、内科学会認定内科医のための症例がそろっただけでなく、全身を診る内科医としての知識・技術を深める機会になりました。

腫瘍内科でのがん診療は、化学療法(または放射線化学療法)と支持療法、そして緩和ケアの三本立てです。それぞれについて研修したことを書いてみました。

【化学療法】
 エビデンスに基づいた標準治療について多く経験させていただき、治療に伴う有害事象とその対応(支持療法)について学びました。当科では抗がん剤治療中の患者さんのQOLを重視しており、継続可能ながん治療を目指す姿勢に共感しました。可能な限り外来での抗がん剤治療(外来化学療法)を導入し、少しでも普通の生活ができるように配慮すべきであることを学びました。また、大規模臨床試験や治験の症例を担当することで、エビデンスの創出に関わることができたのは良い経験です。標準的な治療が確立していない症例では、過去の文献等を参考に、効果の期待される治療を提案して、患者様との相談の上で治療を実践することもありました。合併疾患のために通常の化学療法の適応となりにくい症例も多く経験しましたが、患者様の希望に添えるように、積極的に治療に取り組みました。難しい症例を経験することで、腫瘍内科医としての幅が広がったように思います。

【支持療法】
 支持療法というのは、抗がん剤の毒性・副作用に対する治療のことです。各抗がん剤の作用メカニズム、副作用の知識を学んだ上で、その治療法を学ぶ必要があります。抗がん剤の毒性は全身の臓器に及びますので、腫瘍内科医はがん治療のspecialistであると共に、内科のgeneralistでなければならないと思いました。九大病院第一内科では、他のグループの医師が同じ病棟で仲良く働いていますので、自分が苦手な分野についても他の医師に気軽に相談できる環境で、大変勉強になりました。

【緩和ケア】
 緩和ケアは終末期医療と同義ではなく、がんに伴う症状(痛み、食欲不振、呼吸苦などの身体症状から抑うつ・不安などの精神症状まで)改善のための治療のことであり、がん治療と並行して行っていきますので、腫瘍内科医は緩和ケアを学ぶ必要があります。オピオイドの処方機会も大変多く、難治性のがん性疼痛が自分の処方した薬により緩和される様子を目の当たりにし、その重要性を実感しました。院内緩和ケアチームには疼痛管理の専門家、精神症状ケアの専門家がいて、当科は緊密な連携関係にありましたので、難しい症例を相談する中で緩和ケア(症状に対する薬物療法、コミュニケーションスキルなど)について理解を深めることができました。さまざまな理由で化学療法ができない患者様は、緩和ケアが治療の中心となります。福岡県は緩和ケア病棟をもつ病院が全国でも多い地域で、当科では緩和ケア病棟を持つ病院と連携を進めています。しかし諸事情により患者様を院内で看取るケースも何例か経験しました。患者さんが最期の時までそれぞれの人生を全うできるためのサポートを上手にできるようになることが、主治医である腫瘍内科医には求められると思います。

【緊急症】
 腫瘍の進行や抗がん剤の毒性による緊急症の対応では、救急医療で求められるような迅速かつ的確な判断が必要ですし、全身管理についても知識と技術が要求されます。初期研修での経験を生かす場になりました。

実際に腫瘍内科で研修をしてみて、腫瘍内科の臨床は、慢性疾患の診療に似ていると思いました。難治性の疾患では、患者さんは病気と共に生きることになり、病気がある限り、患者さんと主治医との付き合いは続くことになります。このように一人一人に寄り添うように長く付き合う診療スタイルは、患者さんとの信頼関係を大事にしたいと考える私にとってピッタリだと思いました。

大学病院での研修は初めてで、研修医時代の病院との違いに戸惑いもありましたが、大学での研修ができて良かったと思います。大学の研修で良い点は、医師数が多く一流のスタッフが揃っていること、カンファレンスが多く一症例ごとの考察が深いこと、学生・研修医の教育に関与できること、などでしょうか。

将来の日本の医療を担う医学生、研修医の皆様へ

とにかく、日本では抗がん剤治療の専門家が不足している現状があることを皆さんにぜひ知っていただきたいと思っています。いろいろな病院から、腫瘍内科医の派遣をしてほしいとの要請があるようなのですが、当科では人材不足のため十分に応えられていません。もっともっと仲間が増えればと、いつも悔しく思います。日本のがん医療を良くしていくためには、あなたの力が必要なのです。人材不足の分野はそれなりに大変でもありますが、非常にやりがいがありますよ。

私は、日本における抗がん剤治療の専門家を一人でも多く増やしたいという希望があります。九大第一内科は腫瘍内科の研修に最適の場だと思います。志を同じくする人と共に学びたいと思っています。興味をもたれた方はぜひ当科へご連絡ください。

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